350Ωのトルク測定ゲージKFGS-2-350-D2-11

ドライブシャフトトルク計測機器についての相談を受けた結果…
御殿場のホシノレーシング様へ行ってきました

今回のお客様

 

ホシノレーシングチームTEAM IMPUL(有限会社ホシノレーシング ファクトリー)様

ご相談内容

以前使用していた古い古いドライブシャフトのトルク計測機器を、現代のマシンに使ってみたい!

前説

スーパーフォーミュラの車重はドライバー込みで670kg、 エンジンの最高出力は550PS以上、加速減速が激しいレースでドライブシャフトにかかる負荷はかなりのものになります。(ちなみに現行モデルではないが最軽量の軽自動車は車重だけで650kg、最高出力は64ps)

今回は、昔々使っていてサポートも終了してしまった海外製のテレメーターをそのまま使いたいが、メーカーのサポートも終わり、どうにか利用できないか?のご相談。

この時の一番の気がかりは、動作確認が取れないので本当に問題なく使用できるのかわからないってことでした。

後々わかったことですが、無線式ということで消費電力を抑える目的なのでしょうが、 1000Ω専用のひずみアンプが使われており、当初貼った350Ωのゲージではうんともすんともいいませんでした・・・ 無線式じゃない他のセンサー類は全部350Ωらしいので、ホシノレーシングの方たちもエッ?まさか?って感じだったようです。

ドライブシャフトにひずみゲージを貼りトルクを計測することで様々なことがわかります。

ドライブシャフトは回転しますので、当然ながら無線式のテレメーター以外は使用できません。

今回は既存の海外製テレメーターを使いたいというご要望に沿うよう考えて対応します。

ただし、お持ちのテレメーターの作動自体に問題のないことを前提とした上です、これを事前に試すことは難しいことでした。

尚、無線式ということで電池を使用しますので、消費電力が低くなるように1000Ω限定のアンプが内蔵されているテレメーターでした。

ここに気づかず、当初350Ωのゲージを使って大失敗…

ゴールドっぽい左右に伸びたシャフトが今回のものです。 左側の緑、右側の赤いのが、海外製メーカーの無線で飛ばす製品、いわゆるテレメーター(子機)です。

今回は1台分、平川亮選手が乗る20号車のものとして製作しました。

さて、この先どうなるのか?成功したのか…!?気になる結果は…スクロールダウンして読み進めて欲しいです。

お問い合せをいただいてからその計測を終えるまでのストーリー

お問い合せ、見積り、発注、納品、計測を終えるまでを時系列に反省と脳内つぶやきでチャット風に発表(!)します。ホシノレーシングチーム様側は、当方の都合により簡潔なことばの表現のみにしております、ご了承ください。雰囲気が伝わると良いなぁと思います。

2021/7/6

ホームページからお問い合わせが入りました

自動車のドライブシャフトのトルクを計測するためにドライブシャフトへのひずみゲージの貼り付け・校正をしてもらえる業者を探しておりました。

以前使用していた計測機器を社内で発見し再度活用したいと考えたところ、計測機器メーカー関連ではサポートが終了して困っていたのですが、ネットを検索したところ御社が目に留まりました。

突然の問い合わせとなりますが、こういった内容でも対応していただけるのでしょうか?

お問い合わせありがとうございます。現物拝見してからの回答になりますが、対応は可能と思います。

え?あのホシノレーシング?まさかレース車両にじゃないよね?

レース車両に貼るにせよ過去に誰かがやってるのだろうし、同じことは間違いなくできるだろう

この後メールにてやり取りし、打ち合わせに行くことが決定
しかし、コロナ真っ盛りでなかなか難しい時期でした。タイミングを見計らうこと約2か月

2021/8/30

本日はお打ち合わせよろしくお願いします。今から御殿場へ向かいます。

現物を確認しました。
問題なく使用できそうです!

レーシングカーに使われているひずみゲージ式センサーはどれも350Ωでしたので、 350Ωのトルク測定ゲージKFGS-2-350-D2-11を使用することで進めます。

ドライブシャフトは両端がセレーション(ギザギザ)だな。これはかなり上手な加工屋さんを慎重に選ばなくては

了解です、お任せいたします(^-^)ノ

2021/9/14

シャフト単体でキャリブレーションを必要とします。この分の治具製作含めたお見積りを提出します。

2021/9/29

お見積りOKです!進めてください(^-^)ノ

この度はご注文ありがとうございます。

ドキッ…!(喜)

見積提出後2週間以上音沙汰はなく、諦めかかったころ突然のご注文に驚き。
納期が11/20に決定したことに(テスト走行で実際に使用する日が12月上旬なので) も驚きました。

が準備はしていたので大丈夫!...諦めていなかった(笑)

2021/10/14

新旧両方ドライブシャフト、無線機(子機)届きました。

じゃぁよろしく進めてください(^-^)ノ

この時点で旧ドライブシャフトにつていたゲージの抵抗値をはかっておけばよかったと反省

無線機(子機)は親機(車体側)とペアじゃないと動作させられないので、こちらでは貼ったゲージが問題なく出力するかの確認までをいたしました。
この続きは現地で作業をします。

ありがとうございます、了解です(^-^)ノ

2021/11/16

加工屋さんでキャリブレーション完了しました。

びっくりするくらいねじれるので、想定を超えた値を出力。

これは当社内で想定できた者もいたとかいないとか…まぁあくまでも想定

レースに使う部品って、一般的な材料力学の概念が通じないもんなんだと痛感!

2021/11/17

キャリブレーション完了しましたので、これから納品へ1人で伺います。

承知しました、お待ちしています(^-^)ノお気を付けて

それでは、台上確認を開始します。

台上確認するも無反応…おいおい、うんともすんともいわねーぞ!!頼むわ~

原因を探索中

無線機、親機共に仕様が1000Ωであることが判明しました。

1000Ωの単軸ゲージを斜めに張り、トルクを計測することをご提案します。

了解です(^-^)ノ

即、ひずみゲージ発注しました。

ひずみゲージの発注先へ最速最短の納期をお願いしよう。

2021/11/24

ひずみゲージ入荷しました!

すったもんだありましたが、無事完成

2021/12/2

今回は2人で納品に参ります。

無事に動き、動作確認を終えました。

2021/12/7

鈴鹿でテスト走行します。

鈴鹿サーキットでのテスト走行、1日目は雨で2日目は晴れ だったようですが、両日とも問題なくデータが取れたようです。

遠心加速度は1000G以上になると思いますが、ちゃんとデータも飛んでるようですし、防水も含め対策をきっちりやったので、不具合も起きず、ゼロ戻りも良かったので、再利用もできるし良かった!

2021/12/10

問題なくデータ取れました(^-^)ノ

問題なくデータが取れましたか!安心しました。うれしいご連絡ありがとうございました。

やった!よっしゃー!上手くいった!うれしさと…安堵の波が押し寄せた瞬間です。

★失敗からのリカバリー力(腕)(笑)で大成功!★

取材協力:外部リンク先
HOSHINO RACING/TEAM IMPUL

point

教えてホクヨーさん★営業スタッフ竹田調べ

ドライブシャフトとは?

そもそもドライブシャフトとはなんぞや、ってことですね。ドライブシャフトは部品です。 エンジンの動力を最後にタイヤに伝えるために必要な、大事な、とても大事な部品なのです。

こちら↓のページではF1のことについて語ってますが

F1のことについて語っているホンダさんのページ

F1とスーパーフォーミュラはレギュレーションが違うので、エンジンのパワーが急に上がったりってことはないんですけど、パワーあり過ぎたらねじ切れる、のです。実際に切れたことろはみたことはありません。

ドライブシャフトのトルクを計測する意味については、詳しいページを見つけましたのでリンクを貼っておきます。

トルクとパワー:トランスミッションの基礎知識1 金沢工業大学 工学部 機械工学科 教授 長沼 要様著

レギュレーションって何ですか?

レギュレーションですか。これは部品の名前や動作に関するものではなく、英語、ですね。

ここでは規制、制限・禁止事項などのことを指しています。決まり事あってのレースですからね。

私、竹田が調べた限りでは、スーパーフォーミュラってエンジンの回転数はどんくらいまでいくのか?
ギア比とか?どこにも書いてないんですよ。ですので間違ったことを書いている可能性もありますので、教えてホクヨーさんの回答…丸のみしないでください。

以上です!

point

教えてホクヨーさん ふたたび ★営業スタッフ竹田調べ

このページを読んでもらった知人から、(ただの車好きの素人質問ですまないけどと。)質問をもらいました。主観も入っていますが、私なりの回答をしつつせっかくなので公開します。

シャフトって1秒間に何回転くらいするの?

スーパーフォーミュラ(以下SF)に関していえば、最高回転数が調べても出てこないので、 ざっくり計算しやすい9000rpm(1分で9000回転)。なので、1秒で150回転程度かなと思ってます。 (上限は無いようですが、燃料流量リストリクターっていう仕組みで8000回転を超えると 燃料が流れにくくするようになってるようです。) で、それがギアを通じてドライブシャフトに伝わります。 ここがやっかいなとこですが、エンジンは供給されたものをそのまま使うしかないのですが、ギア比は人(コース)によって変えます。仮にギア比が1.0だったとすると、 エンジンの回転数=ドライブシャフトの回転数になります。 SFでは前進は6速までと規定があるのですが、1~6速のギア比をどうするか、 が出力をどうさせるか、につながるんだと思います。

エンジンは決まっていていじれないので、予選用と決勝用のギアを用意しておいて、 データ見たりドライバーの感覚で決勝とかで変更してくるんじゃないでしょうか。 ここらへんはF1含め詳しくないのでわかりませんが、下記のページもご参考ください。

減速比や変速比とは?最終減速比が上がればトルクも上がるのか? | MOBY [モビー] (car-moby.jp)

その際にかかる負荷はどのくらいなの?(わかるの?)

負荷はひずみゲージを貼っているので、ひずみとしてはわかります。ということだけは言えます。

これ以上も詳しく説明することはできますが、残念ながら掲載することのできない話しです。

硬ければ硬いほど良いの?

金属は一般的には硬い方が強いとされますが硬く強いが故、いきなりバキッと折れます。

なので合金といわれるものはいろんな成分を混ぜて、狙った硬さ(柔らかさ?ねばっこさ?)の金属にしてます。 ドライブシャフトの材質は不明といわれました。(供給されるものなので)

ねじれないでダイレクトの方が良い場合は剛性をあげるの?

上の回答とちょっと重なりますが、ねじれることで力を逃がしてるんだと思います。 仮にねじれずエンジンの出力がギアボックスから直でタイヤ(ホイール)に伝わると、 接続してるところがすぐ壊れるんじゃないでしょうか。 壊れないように剛性を上げればいいのでしょうが、そうすると重くなりますよね。 まぁ、SFに関していえば全て供給されてるものなのでそもそも仕組みを変えることすらできませんが。

ねじれないと剛性は破綻するの?

上の回答と同様になります。

添付資料は2015のレギュレーションですが、おそろしく細かく規定されてます。

ちなみにギア比はMT車の免許があればなんとなく想像つくかな?と思いますが、 速度が出てないのに6速とかにできないですよね。 あくまでも加速しながら1→2→3と上げていきます。 それは回転数を特定の数値にキープしたいからなんですよね。 走りながら一番パワーが出る回転数になるように、ギアを変えて走ってます、たぶん。 でも、それだとタイヤがもたなかったりするので、ピットとやり取りしながら うまいこと調整しながら走ってるんでしょう。

ドライバーとエンジニアの腕が試されるレース、それがスーパーフォーミュラ

参考のサイトページ

About SUPER FORMULA | SUPER FORMULA Official Website

挑戦のそばに│「アミノバイタル」│味の素株式会社 (ajinomoto.co.jp)

上記も私、竹田の調べた限りの話しです。間違ったことを書いている可能性もありますので、あくまでもひとつの情報として参考するにとどめてください。正確な情報はご自身でお願いします。

以上です!最後までお読みくださりありがとうございました。

今回のまとめ

ホシノレーシング/チームインパル様のご要望

以前使用していた海外メーカーのドライブシャフトのトルク計測装置(無線式)を使いたいが、 そのメーカーがすでに日本から撤退しており、困っている。 マシンも変わり、ドライブシャフト径が違うので、新しいシャフトにひずみゲージを貼り、また使えるようにしてもらえないか?

当社ホクヨーからのご提案

トルク計測用KFGS-2-350-D2-11というひずみゲージを2枚貼ることによって同じことができるようになる。実負荷をトルクでかける必要があるので、治具製作も含め、対応は可能と伝える。

制作日数

50日ほど

最初の問い合わせ7/6、コロナの影響もあり打ち合わせは8/30、見積もり提出9/14、 注文きたのが9/29、納品11/17、再納品12/2、鈴鹿でテスト走行12/7 注文来てから最初の納品までは(実際の製作日数は)50日くらいでしたが、 最初の問い合わせがあってからずっと考え、根回ししていたことなのでこの日数で制作できたと思います。

制作費

100万円以内

大変だったこと・納品後ふりかえって

そもそも、レーシングカーに使われる部品というのは、素材含め得体のしれないもの(ブラックボックス)らしく、今回のドライブシャフトもどれだけ捻じれるのか、誰にもわからないものでした。

また海外メーカーの無線機も得体のしれないもの(ブリッジ抵抗1000Ω限定)ということで、 最初に貼ったひずみゲージ350Ωではうんともすんとも言わず、急遽ひずみゲージを抵抗値1000ΩのKFGS-2-1K-C1-11(単軸)に変更し、斜めに4枚貼ることでトルク計測できるようにしました。

ドライブシャフトは両端ともスプライン(ギザギザ)加工がされており、現物をみながら現物加工ができる業者さんが必要。ゆるゆるだとトルクをかけたときに歯がなめてしまうし、きつすぎると入れたら最後抜けなくなってしまう。この加減がかなり難しい!!

またそれなりの重量(60kgくらい)あり、運搬も含め近隣で探す必要があったこと。

そして、ありえないくらい捻じれたのでいろんなものが壊れるんじゃないかとヒヤヒヤしました。

いつもいつも無理難題に答えてくれる協力会社の皆様には感謝感謝しかありません。この場を借りてお礼申し上げます。